特許温故知新(5)三極真空管の特許
前回、「エジソン効果」を使った「二極真空管」をフレミングが発明したという話をしました。
「二極真空管」はその「整流作用」を使ってアンテナで受信した高周波の電気信号から、音声やデータなどの信号成分を取り出す検波回路に用いることができました。しかし、「二極真空管」は増幅機能がありません。
初めて、信号の増幅を可能ならしめたのが「三極真空管」でした。
リー・ド・フォレストの三極真空管の特許(米国特許879532)を紹介しましょう。
米国特許879532[1]
発明者:リー・ド・フォレスト
発明の名称:宇宙電信(SPACE TELEGRAPHY)
目的:振動検出器の感度を高めることである。

米国特許879532の図1より[1]
図の説明
1~4 :端子
a :グリッド
b :プレート(電極)
A,B :電池
C,C’:コンデンサ
D :真空引きされた容器
E :接地接続
F :フィラメント
I1 :変圧器の一次側
I2 :変圧器の二次側
M :変圧器
T :信号表示装置(電話機)
V :高架導体
特許請求の範囲:
1.真空容器、その中に封入された電極、前記電極を加熱する手段、前記容器内に封入された第2の電極、前記電極に電気的に接続された端子を有する局所回路、前記容器内に封入され前記電極間に配置された導電部材、および検出すべき振動を前記第1の電極および前記導電部材に伝達する手段を備える振動検出器。
2-21.省略
(本ブログ著者コメント)高架導体Vを介してキャッチされた「電波」信号は変圧器Mの二次側I2(コイル)に誘起されます。
二次側I2(コイル)の片側は端子2を経由してフィラメントFと接続され、また、他方の側はコンデンサC’を経由してグリッドaに接続されます。
フィラメントFとプレートbとの間には電池Bにより電圧を印可します。
フィラメントFを電池Aにより加熱すると、フィラメントFから発生した熱電子が陽極であるプレートb側に移動します。
このとき、フィラメントFとグリッドaの間には、「電波」に起因する電位差が発生していますから、その電位差に応じて、フィラメントFからプレートbへ移動する熱電子すなわち電流が変調されます。
その結果、信号表示装置Tには、フィラメントFとプレートbの間に流れる電流に応じた信号が発生します。
明細書には、「回路にコンデンサC’を挿入したところ、当該コンデンサの存在により、発振検出器の感度が大幅に向上することが判明した。当該コンデンサが存在する場合に電話機Tから発せられる音が、コンデンサを使用しない同一条件下で発せられる音に比べて著しく増大することから確認できる。」という記載があります。
実際に実験した人にしかわからないことです。
発明者ド・フォレストの興奮が伝わってくるような記載だと思いました。
三極真空管の最初の応用は、無線通信の受信機における高周波信号の増幅器だったということです。
エジソンは白熱電球を実用化し、また、白熱電球のフィラメントと金属板の間に電流が流れる「エジソン効果」を発見しました。
これをきっかけとして、ジョン・フレミングが「二極管」を発明し、交流の整流や高周波の検波が可能になりました。
さらに、リー・ド・フォレストが「三極管」を発明し、信号の増幅を可能にしました。
こうして、電気信号を自由自在に扱うエレクトロニクス(電子工学)が誕生したのでした。
<参考文献>
[1]米国特許879532
[2]ディヴィッド・ボダニス,「電気革命 モールス、ファラデー、チューリング」,吉田三知世訳,新潮文庫,2016
[3]名和小太郎,「起業家エジソン 知的財産・システム・市場開発」,朝日新聞出版,2001

