特許温故知新(4)二極真空管の特許
前回、「エジソン効果」を使ったエジソンの電気表示器に関する特許を紹介しました。
しかし、「エジソン効果」を使った「二極真空管」を発明したのは、エジソンではなくジョン・アンブローズ・フレミング(以下、フレミングという)でした。
エジソン電灯会社で電気顧問として働いていた時にフレミングは「エジソン効果」のことを知ります。
その後、フレミングはマルコーニ無線電信会社に技術顧問として雇われ、無線通信の受信機の改良に取り組みます。
その過程でフレミングは「エジソン効果」を使った「二極真空管」の発明に至ったのです。
なお、「二極真空管」は交流を直流に変換する「整流作用」を有し、アンテナで受信した高周波の電気信号から、音声やデータなどの信号成分を取り出す検波回路に用いることができます。
また、エジソン効果(熱電子放射)とは、熱せられた負極性のフィラメントと、近傍に設けられた正極性の金属との間で電流が流れる現象のことです。エジソンが発見しました。
フレミングの「二極真空管」の発明(米国特許803684)を紹介しましょう。
米国特許803684[1]
発明者:ジョン・アンブローズ・フレミング
発明の名称:交流電流を直流電流に変換する装置(INSTRUMENT FOR CONVERTlNG ALTERNATING ELECTRIC CURRENTS INTO CONTINUOUS CURRENTS.)

米国特許803684の図1(無線電信への応用例)より
図の説明:
a :ガラス球
b :フィラメント
c :アルミニウム製の円筒
d :白金線
e,f:リード線,導線
h :電池
j :導線
k :誘導コイルの二次巻線
l :検流計(ガルバノメーター)
m :誘導コイルの一次巻線
n :アンテナ線
o :接地
特許請求の範囲:
1.真空容器、その容器内で互いに隣接しているが接触していない2つの導体、一方の導体を加熱する手段、および2つの導体を接続する容器外の回路からなる組み合わせ。
2-37.省略
明細書には「この装置は、高周波または低周波の交流電気振動を整流するために使用できます。」と記載されています。
エジソンは「エジソン効果」を発見しておきながら、なぜ「二極真空管」の発明が出来なかったのでしょう。
ここからは、筆者の推測になります。
1.エジソンは白熱電灯の発明をするとともに、家庭や工場などに送電する送電網を構築することも考えました。そして、送電の際に採用したのが「直流」でした。
一方、送電網の構築に関してライバルだったニコラ・テスラは「交流」方式を採用し、エジソンとの間で熾烈な「電流戦争」を繰り広げることになります。
「直流」派のエジソンは「交流」を毛嫌いしたため、「交流」をどうにかして「直流」に変換することに思い至らなかった可能性があります。
2.「二極真空管」の最初の応用は無線の受信機でした。エジソンは電波を使った無線通信に取り組んでおり特許も取得していたのですが、その特許をグリエルモ・マルコーニ(マルコーニ無線電信会社を興した)に売却しています。このことから、エジソンは無線通信の将来性を過小評価していた可能性があります。そうでないとしても、自分が取り組むべき事業ではないと考えていた可能性があります。そのため、無線機の検波回路等に適用できる「二極真空管」の発明には至らなかったのではないでしょうか。
<参考文献>
[1]米国特許803684
[2]名和小太郎,「起業家エジソン 知的財産・システム・市場開発」,朝日新聞出版,2001

