本の紹介--「iPod特許侵害訴訟 アップルから3.3億円を勝ち取った個人発明家」
「iPod特許侵害訴訟 アップルから3.3億円を勝ち取った個人発明家」(著者:新井 信昭、出版社:日本経済新聞出版 、発売日:2018/9/15)という本を紹介します。

図1 書籍『iPod特許侵害訴訟 アップルから3.3億円を勝ち取った個人発明家』の書影
iPod特許侵害訴訟とは、Appleが発売している携帯音楽プレーヤーiPod(登録商標)の「クリックホイール」に対し、個人発明家である齋藤氏が自身の特許を侵害したとして起こした訴訟のことです。

図2 クリックホイール
侵害訴訟を起こして3億3,600万円の損害賠償命令を勝ち取るまでを詳細に追った本なのですが、特許出願から権利化まで、さらに、分割出願、訂正審判、無効審判、侵害訴訟等、特許に関係する様々な場面が紹介されており、読み応えのあるノンフィクションであると同時に、特許出願に関する手続きや、関係する法律を学べる入門書にもなっています。
「クリックホイール」に関する発明は、以下のステップでなされました。
①ソニーの携帯電話は、電話帳検索等を行う「ジョグダイヤル」が便利であると(発明家斎藤氏は)感じた
②ジョグダイヤルについて改良すべき点を(以下の3つ)考えた
(1)動く部分はない方が良い
(2)奥行スペースを省略したい(小型化したい)
(3)(ソニーの「ジョグダイヤル」は左手親指で操作することが想定されているが)ジョグダイヤルに左も右もなくしたい(右手でも操作できるようにしたい)
③あれこれと試して失敗と改善を重ねるうちに、リング状もしくはドーナツ形のタッチパネルのアイデアに突き当たった(この段階のタッチパネルにはまだスイッチ機能はない)
④(リング状もしくはドーナツ形の)タッチパネルの応用を考え始め、自宅にあったスーパーファミコンのコントローラの十字キーのプッシュボタンとタッチパネルの組み合わせを思いつく(これによって、「クリックホイール」のアイデアが完成する)
この本では上記の発明の過程が詳細に記載されており、大変興味深いものでした。
特許となり得るような新しいアイデアを生み出すコツがあるとすれば、
①基本的技術の知識を幅広く蓄えておくこと
②課題や改良すべき点を考える癖をつけること
③常識にとらわれず自由に発想すること(例えば、従来、組み合わせることが想定されていないものでも組み合わせてみる)
ということかなと、この本を読んで思いました。
とはいうものの、過剰に発明を難しく考える必要はないかもしれません。
「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」(ジェームズ・ウェブ・ヤングの名著「アイデアの作り方」より)のですから。


